結論から言います:「AIが電話をかける」は、かけられる側にも関係する話です
Googleが、AI「Gemini」を使ってユーザーの代わりに電話をかけるテスト機能を発表しました。現時点ではアメリカのPixel 11オーナーでGeminiの有料プランに加入しているユーザーを対象としたテストですが、この機能が示す方向性は「近い将来、お客さんの代わりにAIが電話をかけてくる可能性がある」ということです。
大企業向けの話に見えるかもしれません。しかし、電話でお客さまの問い合わせを受け、予約を取り、営業時間を案内しているのは、むしろ地方の中小企業です。この変化を「自分には関係ない」と見過ごすと、ある日気づいたら「うちのお店の情報がAIに正確に伝わっていなかった」という事態にもなりかねません。
Googleが発表した「AI電話代行機能」とは何か
TechCrunchの報道(2026年9月25日)によれば、Googleは「GeminiがユーザーのためにビジネスへAI電話をかける」機能をテスト中です。
この機能の基本的な仕組みとして報道から読み取れるのは、ユーザーが「このお店の予約を取って」「営業時間を調べて」といった用件をGeminiに伝えると、Geminiが実際にその店舗へ電話をかけて代わりにやり取りをする、というものです。
Googleはこれをまずアメリカ国内のPixel端末ユーザー向けにテストしており、有料のGeminiサブスクリプションが必要です。日本でいつ展開されるかは現時点では不明ですが、Googleがこの方向性に本格的に投資しているのは明らかです。
ここで一つ補足を。「AIが電話をかける」というとSFのように聞こえますが、技術的には「音声で会話しながら情報を取得・予約を実行するエージェント機能」です。エージェント(agent)とはAIが自律的に行動を起こす仕組みで、ユーザーが操作する代わりに、AIが目的を達成するために必要な手順を自分で踏んでいきます。
なぜ中小企業経営者がこれを知っておくとよいのか
「電話で問い合わせを受ける」ビジネスに直接関わる変化です
飲食店の予約受付、整体や美容院の予約、小売店への在庫確認、工務店への見積もり相談。これらはすべて電話が主要な入口になっているケースが多いです。愛媛・松山を含む地方の中小企業では、いまだに電話が主力の問い合わせ手段であることも珍しくありません。
AIが「お客さまの代わりに電話をかける」ということは、次のような変化を生む可能性があります。
電話の中身が変わる可能性 これまでお客さまご本人が話していた電話が、AIのテキスト読み上げ音声でかかってくることになります。受付スタッフが「なんか話し方が機械的だな」と感じるケースも出てくるかもしれません。ただし、どこまでAIと判別できるかは現時点では不明です。
問い合わせの内容が整理されてくる可能性 AIがかけてくる電話は、あらかじめ用件が整理された状態になると考えられます。「○月○日の○時に2名で予約したい」のように、ユーザーが伝えた情報をまとめてから電話をかけるはずです。これは受付側にとって、ある意味で聞き取りやすい電話が増える、ということかもしれません。
Webやオンラインの情報精度が重要性を増す AIが電話をかける前の段階で、Googleマップや公式サイト、各種メディア上の情報を参照していると考えられます。AIは「このお店の電話番号」「予約可否」「営業時間」「対応可能なメニューや料金」をネット上から収集してから行動するはずです。その情報が古かったり、間違っていたりすると、AIが誤った情報をもとに電話をかけてくることになります。
具体的にどんな場面を想像すればよいか
シーン1:美容院の予約をAIが代行する
あるお客さまがスマートフォンに「来週の火曜日午後2時以降、松山市内でカットとカラーができる美容院を予約して」と話しかけます。GeminiがGoogleマップとその美容院の公式サイトを参照し、空き状況を確認、電話をかけて予約を入れる、という一連の流れが起きる可能性があります。
このとき、Googleビジネスプロフィールの情報が最新でない(定休日が古い、電話番号が変わっている、サービス内容が書かれていない)場合、AIは誤った情報をもとに行動します。最悪の場合、予約できなかったり、違う情報を伝えてしまったりするかもしれません。
シーン2:工務店へのリフォーム相談の下調べ
ある施主が「地域のリフォーム会社の対応エリアと概算費用の感覚を事前に確認したい」とAIに依頼します。AIがいくつかの工務店に電話をかけて情報を収集し、施主に「この3社が対応可能で、費用感はこのくらいです」とまとめて報告する、という流れも考えられます。
このとき最初に電話がかかってくる会社は、オンライン上での情報が整っている会社です。ホームページが古い、対応エリアが書かれていない、電話番号が見つかりにくい、という状態では、そもそも候補にすら上がらない可能性があります。
シーン3:飲食店の営業確認
旅行者がGeminiに「今日の夜、松山市内でじゃこ天が食べられる居酒屋を探して、予約できるか確認して」と頼む。AIが検索して電話をかける、という流れです。この場合、Googleマップや食べログ等の情報が充実している店舗が選ばれやすくなると考えられます。
経営判断のうえで今すぐ確認しておきたいこと
この機能がいつ日本でも使えるようになるかは現時点では不明です。ただし、Googleがこの方向に進んでいることは確かであり、対応できる状態を整えておくことには損がありません。
1. Googleビジネスプロフィールの情報を見直す
電話番号、営業時間、定休日、提供サービスの内容。これらが最新の情報になっているか確認してみてください。AIが参照する情報源として、Googleビジネスプロフィールの精度は以前より重要性が高まっています。特に「コロナ禍で変えた営業時間をそのままにしている」「移転後も古い住所が残っている」といったケースは今すぐ修正する価値があります。
2. 電話での受け答えの「型」を整理しておく
AI電話が一般化すると、予約確認の電話が「整理された質問形式」でかかってくるケースが増えるかもしれません。スタッフが「予約日・人数・名前・連絡先」をスムーズに聞き返せる受け答えの型を整えておくと、対応がしやすくなるかもしれません。これは特別に新しいことではなく、電話応対の基本の見直しです。
3. 公式サイトのFAQや基本情報を充実させる
AIが電話をかける前に参照するのは、インターネット上の情報です。「よくある質問」のページや、料金・対応エリア・予約方法のページを整備しておくことは、AI検索に引用されやすくする(AEO:Answer Engine Optimization)ことにもつながります。電話をかけずに解決できる情報が整っていれば、AIが電話しなくてよいケースも増えます。これは「AIに正確に自社を理解してもらう」という観点から、今後ますます重要性が増すと考えられます。
まとめ:「かかってくる側」として準備しておく価値がある
Googleが発表した「GeminiがユーザーのためにAI電話をかける」機能は、現時点ではアメリカのPixel 11ユーザー向けのテストです。ただし、その方向性は「AIが人間の行動を代行するエージェント化」という大きな流れの一部であり、日本の中小企業にとっても他人事ではありません。
特に地方の中小企業は、電話が主要な問い合わせ・予約の入口になっていることも多く、AI電話が普及したときに「かかってくる側」として備えられているかどうかが、集客の質に影響する可能性があります。
今すぐできることは大きな投資ではありません。Googleビジネスプロフィールの情報を最新にする、公式サイトの基本情報を整理する、この二つだけでも状態は大きく変わります。
「AIが代わりに電話をかける」という動きが本格化したとき、自社の情報が正しくAIに届いているかどうか。その視点で一度、自社のネット上の情報を見渡してみるのはいかがでしょうか。